にょこにょこ

嘘を書いた雑巾を配るページ

落下一生

 十字型に五つ星が並んで在って、私たちが住んでいるのは真ん中の星です。星と言っても地面はありません。ある、という学者も居ますが、確かめた者はいません。かつて「絶対にあるはずなので確かめてくる」と真横に落ちていった学者が居ましたが結局戻ってきませんでした。以来、地面は無いものと――あるいはとても恐ろしい者が住む場所と考えられてきました。が、今ではそう考える者もいません。この星に生きる者であればそれはどうでもいい事でありますし、覚えていた者も次々に忘れていったのでしょう。
 夜になると、四方に丸く光るものが見えるでしょう。それが、十字型の端々の星たちです。丸く見えるのは、その星たちには地面があるからです。星には普通地面があります。地面はかつて学者にそうしたように、近づく者を引っ張って殺してしまいます。
 ですが私達の星は十字の丁度真ん中ですので、引っ張る力は打ち消しあって弱くなっています。また四つの星に順番に引っ張られる事によって、落ちずに、浮かび上がらずにずっと飛んでいる事が出来るのです。
 そういうわけで、この星が生まれて以来、あらゆるモノが流れ続けています。あの星々の引力に順繰り引きつけられながら、この星の「そとっつら」をぐるぐる回り続けています。あなたたちの羽だってそうです。飛び続ける星で生活しやすいように、体が進化して羽が生えました。皆さんが朝食べてきたであろう「ベイヒス」や「ムヒス」についている空気袋も、進化の過程で浮き沈みを調節すべく出来上がった機能です。
 さあ、あと二十分ほど飛べば夜になるでしょう。今日はおしまいです。明日もこのフロアに集合ですから、忘れずに来て下さい。羽の手入れをしっかりとしてから寝る事。引力は休まず働いているんですからね。

 子供達を帰した後、羽を休めているとやがて眠りに落ちた。優しい地面のある星の夢を見た。羽のない子供達が机を据えて椅子に座り、自分の話を聞いていた。固いものがあたりまえにあって、それが色んな場所を区切っていた。区切れるから区切るのだ、と校長は言う。夢に居心地の悪さを感じながら、自分が明日子供達に教えるべき事を考えた。