にょこにょこ

嘘を書いた雑巾を配るページ

寓話と知恵

 人間の言葉を喋るガウンを着た犬が、暖炉の前に腰かけている。
 すぐ側に座る子供(こちらは普通の犬)に寓話を聞かせているその声は優しい。
「その国の王子様が言ったんだ。
『どうして世の中にこれほど貧しい人が多いのだろう。きっと貧乏というのは大変に楽しいに違いない』
 そして王子様は一人街へと出かけていった。貧乏の楽しさというものを体験する為に。
 そして数日、そう、たった数日なんだが、城では王子が帰ってこないと大騒ぎになっていた。手柄すぐそこにと言わんばかり、兵士達は血眼になって街へ王子を探しに行った。
 さて、兵士達はとうとう王子を見つける事ができなかった。血眼の兵士は何度も、城下町の真ん中で乞食と語らう王子とすれ違っていたのに、結局それに気づいた者は居なかった。
 王子は着ていた豪華な着物を売り、ちょっとだけ薄着になっただけさ。王子は雨風にさらされ、ちょっとだけ顔に土が付いただけさ。そうなるまでの時間だって数日、そう、たった数日なんだが、城の者の誰もが王子に気づけなかったんだ。
 貧乏と金持ちの差なんて言っても、まあせいぜいその程度」
「僕たち犬は?」
子供の犬が聞いた。
「上手に選ぶ事だ。金持ちはうまい飯をくれるけど、貧乏のほうが散歩はしてくれる」